A feeling of a partner
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分からなかった。どうしたら一緒にいてくれるのか。
誰も教えてくれなかったから。
だからいい子でいた。
でも皆ずっと一緒にはいなかった。
オレに何か頼むときだけはいたけど、用が済むともういない。
あいつだけはずっといてくれた。
オレがオレであっても。
けど、あいつはオレを友達だと言ってくれなかった。
あいつが違うって言うなら違うんだと思った。
「友達」ってどんなものか知らなかったから、別に「友達」じゃなくてかまわなかった。
一緒にいてくれるなら、それで。
それでよかったんだ。
けど、それも嫌だって、あいつがいうならそうするしかないだろ?
あいつが嫌ならいちゃダメだろ。
オレは一緒にいたくても、さ。
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涙ながらに語った天国の言葉に、片貝は、そして子津は愕然としていた。
今ここにいる泣いている少年は、本当に自分たちの知る猿野天国なのか。
怖いもの知らずで、開けっぴろげで非常識で…誰よりも、まっすぐで強い。
そんな天国の姿が根本から覆される。
これが本当の彼なのだ。
沢松が知っていたと思っていた彼とも、もちろん自分たちが知っていたと思っていた彼とも違う。
人との接し方を知らない不器用で寂しがりの…小さなこども。
たった一人の大事な人間をわがままも言えずに手放してしまう、悲しい子。
(…こんな泣き方……。)
先に天国の泣き顔に耐えられなくなったのは、片貝だった。
「ばっかやろ…。」
「片貝くん?」
子津が驚く間に、片貝は天国の襟をつかんだ。
「ちょ、片貝くん!」
「…?」
「お前な、沢松と一緒にいたかったんだろ?
それ、あいつに何で言わないんだよ!!」
「え…?」
片貝の憤慨に天国はきょとんと眼を見開いた。
「お前らがどう自分たちをダチじゃねえとか説明つけててもな、
俺らの目にはお前らはダチにしか見えなかったし、それ以外なんでもなかったんだよ。
それでお前はあいつと一緒にいたいんだろ?
あいつだってお前といるのがホントに嫌ならとっくにお前から離れてたんじゃねえのか?」
片貝は必死で天国に聞いたが、天国は力なく首を横に振った。
「…オレがくっついて行ってたからだ。
あいつは嫌だって…。」
「それ…それ、違うっすよ!」
天国の拒絶に、子津もたまらず口をはさんだ。
「沢松くんは、無茶する猿野くんを見てられなくて、
それを嫌だって思ってたんっすよ?
あんな言葉になってたけど…あれは本心じゃないっすよ!」
子津の言葉に、天国は激しく反応した。
その瞳には怒りがこもっていた。
「何で…そんなことが分かるんだよ?!」
「猿野くん!」
「お前らの思い込みであいつの気持ち決めつけるなよ!
嫌なんだよ、もう下手に期待したくない…いてもいいって勝手に思い込んで、
あいつの嫌そうな顔見たくないんだよ…!」
天国の中にある孤独が吐き出される。
「猿野…っ!」
「いい加減にしてくださいっす!!」
子津の一括に天国はびくりと震えた。
子津は確かに怒っていたから。
「猿野くんこそ勝手に沢松くんの気持ちを思いこんでるじゃないっすか…。
それに、僕や…みんなの気持ちだって。
猿野くんがいたらダメな場所なんてないっす…!
だいいち…。」
「…嫌いな人間おっかけて伊豆くんだりまで行くかよ、アホ。」
「…っ…。」
突然別の場所から飛び込んできた声。
振り向くとそこに。
「…さわ、まつ…。」
「悪いな、全部聞こえた。」
「……。」
天国はばつの悪い、という表情で目をそらした。
「…天国。いっぺんちゃんと話そうぜ。
子津、片貝。こいつ借りるな。」
「ああ、とっとと持ってけ。」
「明日の朝練にはちゃんと来てくださいっすよ。
…待ってるっすから。猿野くん。」
「……。」
「ほら、行くぞ天国。」
強引にひかれた手に天国は言葉もなくついて行った。
初めて触れられた手に戸惑いながら。
To be Continued…
久しぶりにこちらも続きが書けました…なのにまだ終わってない;;
本当に申し訳ありません!!
あと1話、ラストがんばります…。
それにしてもこんなに弱い天国もホントに久しぶりに書いたような。
…楽しいですv
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